I : 手紙 2
時間制限 : 1 秒 | メモリ制限 : 256 MB
コトバ……文字……。ソウだ……私は言葉を知っている。
私は日本語を知っている。堅固な石と鉄扉に囲われて最早ジックリと考え込むしかすることがない。こうしているいま、浮かんでは消えてゆく泡沫の如き思考たちも、渺渺たる無辺際の感覚世界から日本語の原野に墜ちた影を掬い上げては、指の隙間から流れ出てゆくようなものだろう。
気がつくと右手に鋭い礫を握っていた。石床に擦りつけるとガリガリと不快な手触りを伴って白い痕が刻まれる。文字を書かねばならぬ。フツフツと沸き起こりアッという間に抑え切れぬ衝動と化した文字への執着は私の意思と無関係に右手を動かし続け、白い傷痕を増していく。
これは漢字だ。自分が何を書いているのかも分からぬまま、白い漢字を目で追った。いや、本当は分かっている筈だ。何としてもこれを書かねばならぬ。ガリガリ……ガリガリ……。書かねば、遺さねば。この文字を、秋分のひとたちへ……。
ガリガリ……秋分とは、シュウブンとは……何だっただろう。文字を書き終えたことが分かると、右手からはフッと力が抜け、礫は石床を転がった。シュウブンとは……。私は眼を閉じた。意識がフッと抜け落ちた。
※問題文中の文章はすべてフレーバーテキストであり、問題内容とは関係ありません。この問題は画像だけで解くことが可能です。また、この問題は「手紙 1」とは独立した問題です。